新潟、直江津、林芙美子の継続だんご
2023年 09月 28日
























古い時間表をめくってみた。どっか遠い旅に出たいものだと思う。真実のない東京にみきりをつけて、山か海かの自然な息を吸いに出たいものなり。私が青い時間表の地図からひらった土地は、日本海に面した
富士山――暴風雨
停車場の待合所の白い紙に、いま富士山は大あれだと書いてある。フン! あんなものなんか荒れたってかまいはしない。風呂敷包み一つの私が、上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか茫々とした秋の景色だった。あたりはすっかり秋になっている。窓を区切ってゆく、
直江津の駅についた。土間の上に古びたまま建っているような港の駅なり。火のつきそめた駅の前の広場には、水色に塗った板造りの西洋建ての旅館がある。その旅館の横を切って、軒の出っぱった煤けた街が見えている。嵐もよいの
(九月×日)
(中略)
「この団子の名前は何と言うんですか?」
「ヘエ継続だんごです。」
「継続だんご……団子が続いているからですか?」
海辺の人が、何て厭な名前をつけるんでしょう、継続だんごだなんて……。駅の
低迷していた雲が切れると、灰をかぶるような激しい雨が降ってきた。
長い夜汽車に乗った。」









